2015年12月25日金曜日

末期がん患者に対する介護保険サービスの提供に関する調査結果について

 末期がん患者は、比較的日常生活動作(ADL)を保つことができ、死亡2カ月前ぐらいから急速に状態の悪化になることが多く、申請が遅くなり、認定が間に合わない人や、要介護度が出た時は調査時とは異なり重度のなっていることがあった。また、要介護2以上の人が利用できる福祉用具の貸与を受けられない状態が生じていた。
以上のことを解決するために、筆者らがん患者支援団体等が国に検討を求め、2010年に厚生労働省老健局より2つの通知(「末期がん等の方への要介護認定等における留意事項について」「末期がん等の方への福祉用具貸与の取扱等について」)が出されているが、状況の改善に結びついているのか検証が行われていなかった。そこで、「末期がん患者に対する介護保険サービスの提供に関する調査」を行い、バリアの分析とその解決策を図ることを目的とし、調査を行った(藤田敦子,末期がん患者に対する介護保険サービスの提供に関する調査報告書,2011.11.)
調査結果から、「末期」の言葉が患者そして主治医に与える影響、申請時にがん末期と判断できるものがないこと、主治医意見書の記載の不備等により要支援になる人がいること、福祉用具の貸与が一番の問題であることなどが判明した。
また、当初考えていた国や保険者側の問題だけでなく、医療の部分のバリアが多いことなどが示唆された。
問題を解決するためには国や医療、介護関係者が市区町村等保険者も含めて、問題を協議し解決していくことが必要である。

2011年10月20日の第26回がん対策推進協議会において、天野委員ほか患者委員資料10月9日付として、本調査と老健局により行われた調査を合わせて提出し、がん末期の介護保険の現状を国や関係者に伝えた。10月18日付で「末期がん等の方への迅速な要介護認定等の実施について」が新たに出ている。

以上については、「末期がん患者に対する介護保険サービスの提供に関する調査結果について」(ホスピスケアと在宅ケア 2013年第21巻1号 2013年5月15日発行)を参照ください。

末期がん患者に対する介護保険に対して、様々な研究&提言を行ってきたが、2015年12月に「働く世代の末期がん患者、6割が介護申請せず」という調査結果が発表された。病院医療の中でサポート体制がいまだに整っていない。化学療法や放射線治療が外来になったため、在宅へしっかりと繋いでいく人が不在になっている。退院調整でなく、在宅支援の考えが必要であろう。また、医療保険で訪問看護を導入すれば、介護保険について説明を行うはずだが、在宅医療や訪問看護に繋がらず、治療病院を向いた形で在宅療養を送っているのであろうか。

介護保険はより良く生きるための制度であり、人生最終章の医療や介護について深く掘り下げていない。介護施設において『ターミナル加算』ができ、生活の中で迎える死が受け入れられるようになった今だからこそ、「がん」に限定せず、ターミナルの視点を組み込んでいくことが求められている。

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