2013年7月14日日曜日

地域緩和ケアの展望―各国から学ぶ実践

平成25年7月6日・7日に、長崎で、日本ホスピス・在宅ケア研究会の全国大会が開催されました。コミュニティケア部会は、「地域緩和ケアの展望―各国から学ぶ実践」と題し、従来の立場ごとの発表でなく、各国の視察の報告と、それを日本の中でどのように取り入れているか、そして、今後、日本の緩和ケアに求められることを話し合いました。

地域緩和ケアの展望―各国から学ぶ実践

発表者:蘆野吉和(青森県立中央病院緩和ケア)    「地域緩和ケアネットワーク:十和田市における取り組み」
梁 勝則(はやしやまクリニック希望の家 院長)「オーストラリア、イギリス~ドイツの地域緩和ケア見聞覚え書き」
矢津 剛(矢津内科消化器科クリニック 院長) 「ニュージランドにおける英国的ホスピスケアと我が国の動向」
藤田敦子(NPO法人千葉・在宅ケア市民ネットワークピュア 代表)「デンマークとオランダのエイジング・イン・プレイスと高齢者ケア」

座 長:藤田敦子(NPO法人千葉・在宅ケア市民ネットワークピュア 代表)

抄録には、詳細を書きましたので、研究者の方で必要な方は「ホスピスケアと在宅ケア」第21巻2号か題名で検索ください。

ニューズレター用にまとめたのを、下記に入れますね。字数の関係で、かなり、カットしたので、十分な内容になっていませんが、コミュニティケア部会の風を感じてくださいね。来年は7月12日・13日神戸です。また、企画をしていきますので、ぜひ、お立ち寄りください。

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長崎大会でのコミュニティケア部会は、7月7日(日)第7会場にて、例年行っている立場別の発表でなく、各国への視察の報告とそれを実践においてどのように活かしているかを発表しました。会場は立ち見がでる状態で、入口でお帰りになる方もいました。

まず、蘆野吉和さんから、青森県十和田市における取組の報告がありました。高齢化した地方の小都市で、看取りを行う開業医が少ない中、基幹病院の中に総合診療科を作り、在宅医療の担い手および受け皿になり、地域緩和ケア支援ネットワークを構築していることが報告されました。十和田市におけるがん在宅死亡率は、2005年2.2%から2011年22.1%になっており、2009年からは非がん疾患の在宅移行も増えています。蘆野さんから、日本はがん対策基本法ができてからも、抗がん剤治療を外来で行う中、患者に病状や今後の予測される経過について何も知らされていない状況があり、緩和ケアが病院完結型となっている地域も多いのではないかとの発言がありました。

続いて梁勝則さんから、オーストラリア、イギリス、ドイツの報告がありました。有床診療所をベースにしたホスピスと認知症デイを運営する中で医師一人の困難を感じ、緩和ケア研修に参加をしました。オーストラリアでは、予約入院はなし、医師の当直はなく夜間死亡時は翌朝に死亡診断書を作成。庭が美しく、猫もチームだったので、これを取り入れました。イギリスでは、平均13日の入院で入院~外来~在宅がシームレスになっていて、自宅が無理の場合は個室だけど単価が高い月30~60万円のナーシングホームに入るとこことでした、また、ドイツは12日の入院で、緩和ケア病棟とホスピスが明確に区別されており、ホスピスは看護師が常駐して介護職と共に緩和ケアのマネジメントを行っていました。どこもがんに特化せず、神経難病や小児などの取り組みもありました。

矢津剛さんは、緩和ケア住宅と在宅緩和ケアセンターを併設した取り組みの中で、タイやイギリス、ニュージランドの視察を行い、レスパイトケアの重要性と、グリーフケアやボランティアの育成を行っています。ニュージランドのホスピスの在院日数は14日程度で、入院は在宅のためにあると言います。運営費は政府が40%ですが、基金が30%、自前が30%の出資があり、チャリティやリサイクルショップを行うことで、地域が支えるホスピスになっています。会場からの質問では、看取りに遺族ボランティアの参入も行い有用であったが、フラッシュバックなどもあり、配慮が必要と回答されています。また現在、我が国の緩和ケアが寄り添いの母性主義からEBM重視・権威的な父性主義になっていることを危惧しているという言葉もありました。最後に日本の介護保険小規模多機能ケアに看護を加えた複合型サービスが、ホスピス医療ニーズのある患者に応えていく可能性を訴えておられました。

藤田敦子から、デンマークでは、特養の建設を禁止し、高齢者住宅を中心としてITを使い街づくりを行い、緩和ケア科医師は、地域へ出向き、家庭医を支え、又ホスピスでも支えていました。残存機能を残すケアを行っており、リハビリはセラピストが組み、それをヘルパーなどが在宅で機器などを使いながら、毎日継続して行い、本人が花や動物の世話をして、支えられるだけの存在でないことが大事だと教わりました。オランダは、家庭医がおり、安楽死などの手順もとても厳格で、ホスピスは引退した家庭医が顧問となり、看護師や介護職、ボランティアが中心で行われています。ケア付き住宅を中心に街を作り、在宅看取りは病院、自宅、ナーシングホーム等が3割ずつになっていました。オランダは緩和ケアユニットがあり、看取りの時に移動するのが少し気になりましたが、どちらも生活の場の延長として看取りがありました。 

質問の中で、ボランティアの活用が出ましたが、看取りボランティアは引退した専門職が行っておりました。日本では、聞き書きやアロマを使ったボランティアが動いていますが、周辺の環境整備などボランティアには行うことがいっぱいあると発言を締めました。コミュニティへ出る、コミュニティを巻き込む。今後の日本の緩和ケアがたくさんのチームと手を取り合い、がんでも非がんでも、自分らしい生活の延長の豊かな生と穏やか死が提供されることを望みます。