2008年6月21日土曜日

第16回日本ホスピス・在宅ケア研究会全国大会in千葉への思い

by 藤田敦子(NPOピュア代表)です

第16回日本ホスピス・在宅ケア研究会全国大会in千葉の大会長をしています。
講師の方や発表される方の内容を入れた抄録集と参加証の発送作業を
6月14日、そして本日21日と行い、その後は会場の準備へ入っていきます。

抄録集へ「思い」を書きました。皆様、ぜひお越しくださいね。

『地域が一体となったホスピスケアの提供を』
                       千葉大会大会長 藤田敦子
                            
 平成20年という歴史ある年に、第16回日本ホスピス・在宅ケア研究会全国大会を千葉で開催できますことを、実行委員一同嬉しく思っております。
 がん対策基本法・がん診療連携拠点病院構想の下、緩和医療は大きな転機を迎えております。患者が痛みで苦しむことのないように早期から緩和ケアを提供する体制が求められ、また病院内の緩和医療の充実だけでなく、退院後や地域医療施設との連携後の緩和医療の充実も必要条件とされ、在宅緩和医療の推進に地域全体で取り組む方向性が、国の施策として示されました。
 また後期高齢者医療制度が発足し、診療報酬も大幅に改定され、入院時から退院時の生活を念頭に置いた医療の提供をと変換が進められつつあります。そして、在宅での看取りについて、在宅療養支援診療所の創設や24時間体制の訪問看護の推進、療養病床削減に伴う受け入れ先としての介護施設や多様な住居の場での看取りが評価されるようになりました。しかし、制度や施策が新しくなるたびに、一般市民にとっては理解が難しく、戸惑うことが多いのも事実です。独居や高齢者世帯の増加など、在宅への流れを不安視する声もあがっています。何が問題で、何ができていないのか、そんなことをもっと患者や家族を含む一般市民も交えて、話し合う場があればと思います。
今まで、『病院と在宅』『医療と介護』の連携が声高に言われていましたが、実際に連携して学会を開催することは少なかったことでしょう。この千葉大会は、医療・福祉に関わる専門職だけでなく研究者や一般市民も一堂に会し、「がん緩和ケア」を柱として、それぞれの実践者からの報告の場を数多く用意しております。また今回一歩踏み込んで、「施設でのターミナルケア」や「認知症」「小児」「家以外の住まい」などをテーマにした分科会もございます。一般演題も全国から集まり、口頭発表とポスター発表の2種類を用意してございます。
千葉大会は、プレ大会として5月に羽田澄子監督の「終りよければすべてよし」を上映して、すべての人に避けられない死に対してどう向き合うのかを問いかけました。そして、イメージソングとして松尾貴臣さんの「きみに読む物語」を通して、『普通の生活の中で、最期までいのちを輝かせて生きよう』と伝えています。
この研究会の特徴である、医師等を『先生』と呼ばない対等な立場での話し合いを多いにして、より良い連携が生まれることを、実行委員一同祈念しております。また、今回初めて、この研究会にいらしてくださった皆様も、どうぞたくさんの場へ足を運んでください。自分は専門職でないからと一歩引くことはありません。ご自分が興味のある場所へ参加をして、交流を深めてください。
最後に、この大会を開催するにあたり、名誉大会長を快くお引き受け下さった堂本暁子千葉県知事に感謝申し上げます。また後援や協賛、寄付を下さった皆様、遠く関西から応援に駆けつけて下さった研究会理事の皆様、とても忙しい中に仕事の帰りに集まって下さった実行委員の皆様、そして、「心を込めておもてなしをしよう」と集まって下さったすべての方々に御礼を申し上げます。
千葉県には、多くの観光地もあり、おいしい海の幸、山の幸もございます。大会とともに、どうぞ『千葉』を十二分に味わって頂きますよう、お願い申し上げます。
(平成20年7月12日、13日千葉大会抄録集より)

千葉大会の内容は、下記を参照ください。
http://www.npo-pure.npo-jp.net/chibataikai.html

堂本暁子千葉県知事のあいさつ

by 藤田敦子(NPOピュア代表)です。

第16回日本ホスピス・在宅ケア研究会全国大会in千葉も
もう1ヶ月をきりました。
現在、実行委員は準備に奮闘中です。

今回千葉大会では、堂本暁子千葉県知事に名誉大会長をお願いしています。
堂本知事から、参加される皆様へのごあいさつです。

ご あ い さ つ
 名誉大会長 千葉県知事 堂本 暁子

去年の「日本ホスピス・在宅ケア研究会全国大会」は飛騨高山で開かれました。今年は、千葉で開催されると聞いて、飛騨高山大会の抄録集を開いたところ、「『身体的なケア』から『心のケア』へ、その中でもスピリチュアルな領域への注目が高まりつつある。」という一文が目に飛び込んできました。
さらに「スピリチュアルペインはある。確かにある。そして、それに向かい合ってくれる人たちがいて、初めて絶望の底から患者さん本人の力で這い上がってこられる。そのお顔はくっきりとした輪郭の、凛々しい美しさだ。」とあります。
去年は、「日本スピリチュアルケア学会」が誕生したこともあって、「スピリチュアリティ」が多く語られたのかもしれませんが、ホスピスや緩和ケアは、単に痛みをとること以上に、人間の「生と死の尊厳」を保つことの極限的な世界であると知りました。
京大教授のカール・ベッカーさんは「一昔前までは、家族や親類による介護や看取り、さらに、葬儀やお墓の供養についても、村の人たちが集まって、日本ではやっていたようだ」と語っています。外国の方にこのように指摘されて、私はハッとしました。
なぜなら、子どもの誕生や結婚、葬儀に至るまで、日本人が共有していた精神文化を、私達が失っていることに気付かされたからです。
昭和20年前半の平均寿命は50歳で、死亡原因のトップは結核、次は胃腸炎でした。それから半世紀以上の歳月を経て、いまや医療水準は飛躍的に向上し、日本人は世界に類をみない「人生80年時代」を享受しています。しかし、それは同時にこの長寿社会をいかに健康に生き、どのようにして終末を迎えるかについて各人が考えなければならないということでもありましょう。それは、新しく考え出すことなのでしょうか。本来、日本人が持っていた精神文化を取り戻すことなのかもしれません。
さらに、がんの手術の後などは、予後をどう過ごしたらいいのか、多くの人が悩み、苦しみますが、自分が過ごしたいところ、例えば、それが自宅である場合などは、その患者さんを支える訪問看護ステーションの専門家やボランティアをはじめとしたネットワークなどが不可欠です。
「緩和ケアは死ぬための医療ではない。患者と家族が、良い時を過ごし、明日を信じ、明日を生きるためのケアだと私は信じています」と千葉の在宅ケア市民ネットワークのメンバーは言っています。
今年のテーマ「地域コミュニティの場でホスピスケアを」は、こうした精神に裏付けられているのでありましょう。
本日お集まりの皆様は、患者さんやその御家族に常に寄り添い、一人ひとりの患者さんの時間を輝かせ、そして患者さんを見守る御家族に心の安らぎをあたえるため、日々努力されています。こうした患者さんと御家族の大切な時間をしっかりと支えている皆様方の活動に心から感謝したいと思います。ようこそ千葉にお越しくださいました。心から歓迎を申し上げます。
シンガーソングライターの松尾貴臣さんが、余命半年と宣言された方のお話を直接伺い、命の大切さを表現した「きみに読む物語」を大会で歌うことになっています。

またね バイバイ いつかまた会えるよ
大切なことは 僕は君が好きで君は僕が好き
そんな単純なこと


平成20年7月12日、13日 
第16回日本ホスピス・在宅ケア研究会 千葉大会抄録集より

2008年6月2日月曜日

地域の医療を守るのは誰か

by 藤田敦子(NPOピュア)です

NHKで「地域の医療を守るのは誰か」という番組がありました。

行政の怠慢、社会的入院、そして利用する市民の意識がテーマでしたが
私は、そこでなく別のところを感激して観ました。

病院でなく有床診療所にして、老人保健施設とデイケア、そして訪問診療
訪問歯科を組み合わせて、住民の【生と死】をしっかりと支えていました。

病院に入院していたころの無口な95歳の男性が、老健へ行って、職員の
働きかけで、いきいきとお話ができるようになり、家族も受け入れを不安視
していましたが、その変わりように安心して、家へ連れて帰りました。
そして、家にただ戻すのでなく、デイケアで状態を見ていき、必要な人は
訪問診療で医療を届けています。
「そうそう、これなんだよね」と思わずにいられません。
病院から、いきなり家でなく、施設とか、がんなら緩和ケアがあり
そこでチョット状態を良くして、そこから家に戻り、日常をデイケアが支えて
そして、入院や入所があれば、どんな人だって、家にいられる。
がんの末期の方が、家に戻られて静かに最期を過ごされている姿もありました。
医療は、その人の生き方に、そっと寄り添うだけ。

今回の千葉大会では、こんな形を多く用意してあります。
12日に「在宅エンド・オブ・ライフケアの課題」
それから「ホスピスケアからコミュニティケアへ」
また、「在宅ホスピスケアの20年を振り返って」
13日は「施設のターミナルケア」「普通の暮らし、普通の生き方、普通の死」
そして「新たな局面を迎えた緩和ケアー住み慣れた家での最期は可能か」

地域の医療を守るのは、自分の生き方を真剣に考える私たち市民の意識も
必要です。また、病院と在宅、医療と介護の連携も大切です。
その一歩として、ぜひ千葉大会にご参加ください。

大会URL http://www.e.npo-jp.net/chibataikai.html